ロキシー・ミュージック

前回取り上げたブライアン・イーノが、最初に在籍していたバンドがロキシー・ミュージックです。
T.レックスデヴィッド・ボウイと並ぶ、グラムロックの代表格ですから、名前くらいは知っている方が多いのではないでしょうか。


ロキシー・ミュージックは70年代初頭に、ヴォーカルのブライアン・フェリーを中心に結成されたバンドです。
フェリーは美術学校で講師をしながら、キング・クリムゾンのヴォーカリストのオーディションを受けて落ちたりしていた*1のですが、その傍ら結成していたバンドが後のロキシー・ミュージックとなります。
メンバーは後に環境音楽の先達として有名になり、また名プロデューサーとしても知られたシンセ奏者のブライアン・イーノ、ギターのフィル・マンザネラ(最初はサウンドミキサーとしての採用で、イーノの助手的な存在だったが、当時のギタリストが抜けたため代わりにギタリストになった)、木管奏者のアンディ・マッケイ(最初はシンセ奏者だったが木管楽器にコンバートされる)、フェリーの友人だったベースのグラハム・シンプソン、ドラムスのポール・トンプソンという、今ひとつ演奏経験の少ないメンバーでしたが、そのファーストライブで観に来ていたEG(皮肉にも彼らは、フェリーをオーディションで落としたキング・クリムゾンの所属事務所でもあった)の関係者に衝撃を与え、ライブハウス回りを経験せずにメジャー契約を手にします。
彼らはグラムロック全盛時にデビューしたため、その一派とされ後世でもそう分類されていますが、実際共通しているのは初期の頃の派手な衣装とメイクくらいのもので、音楽性に至ってはまったくと言っていいほど共通点はありませんでした。グラムロックのようなシンプルなロックンロールではなく、アヴァンギャルドで実験的なアイディアをどんどん試していく、先進的な音作りをしていましたね。
その自由さはある意味ニュー・ウェーブあたりの先駆者的存在と言えるかもしれません。演奏が稚拙だったところもニュー・ウェーブっぽいかも。


Roxy Music - Virginia Plain


72年にリリースされた記念すべきデビュー・シングル。英国で4位を記録するヒットとなりました。
一聴するとキッチュなポップス、って感じなんですが、よく聴くとシンセもサックスもどこかおかしくて、ちょっと狂った感じがするのがミソですかね。


Roxy Music - Re-make / Re-model


同年にリリースされた1stアルバム『Roxy Music』のオープニングを飾る曲。
この曲はロックンロールの典型的なパターンをループさせ、それにシンセによるノイズを被せるという斬新な構成が話題を呼びました。これは今で言うリミックスのコンセプトと変わらないわけで、そのへんに彼らの先進性を見ることができるでしょう。
まあ初めて聴いた頃はこっちもそんなこと予見できるような頭があったわけじゃないんで、「こいつらただ単に適当に好き勝手やってるんじゃねーの」なんて思ってましたけどww


Roxy Music - Pyjamarama


73年にリリースされた2ndシングル。この曲も英国で10位に入るヒットとなっています。
この曲も『Virginia Plain』と似てて、ポップなのにどこか狂気を孕んだような感じがするのが良いです。
そしてデビューしたての頃のギンギラギンの格好に比べると、スーツになってダンディぶりを強調するようになったフェリーのいでたちにも注目です。


この頃にはベースのシンプソンは脱退しています。以後バンドは正式なベーシストを加入させることはありませんでした。その理由は不明です。
その後出入りしたベーシストの中には、ジョン・ポーター(のちにザ・スミスのアルバムのプロデューサーを務めたことで有名)、ジョン・ガスタフスン(後にイアン・ギラン・バンド)、ジョン・ウェットン(元キング・クリムゾン。後にU.K.、エイジア等)、リック・ウィリス(後にフォリナー)、ゲイリー・ティブス(元ヴァイブレーターズ。後にアダム&ジ・アンツ)、ニール・ジェイソン(元ブレッカー・ブラザーズ)など、数々のプレイヤーがいました。


Roxy Music - Do The Strand


同年にリリースされた2ndアルバム『For Your Pleasure』のオープニング曲。
アップテンポでひたすら突き進むようでありながら、どことなく重たさを秘めた曲です。この手のナンバーは初期では珍しいかもしれません。


しかし2ndアルバムを最後に、イーノがバンドを解雇されてしまいます。
フェリーが「バンドに二人のノン・ミュージシャンは要らない」と言った(「二人のブライアンは要らない」と言ったとの説もあり)という有名な噂がありますが、実際イーノは効果音担当という謎のポジションでありながら、フェリーを凌ぐほどの人気を持っており、また音楽的指向においてもフェリーとは水と油であったため、二人の確執が解雇の原因になったことは間違いないでしょう。
後のロキシー・ミュージックやフェリーのソロを聴く限り、彼はヨーロッパ的なダンディズムを基調としたきっちりとした美意識を持っているタイプと見受けられるので、自分の中で完成している世界をイーノの前衛的な音作りで破壊されるのを嫌がった、という面もあったかもしれません。
とにかくイーノの解雇を転機として、ロキシー・ミュージックの音楽性はさらに変化していくのですが、それについては次回書くことにします。

*1:あのエルトン・ジョンも、同じオーディションを受けて落ちている。ちなみに合格したのは、後にバッド・カンパニーでベーシストを務めた故ボズ・バレル。