モノクローム・セット

一昨日名前を出したので、今回は「ネオアコ界の裏番長」ことモノクローム・セットをいきます。
ネオアコというくくりでありますが、本来このバンドは一風変わったエキゾチック感や人を食ったようなユーモア・センス、ホットロッド仕込みの奇天烈ギターを生かした実験的なインストなど種々雑多な要素を兼ね備えており、例えば今のモンドやラウンジ、ポストロックなどにも通じるものを持ったバンドでした。
ヴォーカルのビドがインド人とアメリカ人のハーフ(当時はバラモン階級という噂もあった)ということもあってか、むせかえるようなエスニックの香りや猥雑感があって、他とは一線を画す個性を持っていました。アンディ・ウォーホルは彼等のサウンドについて、「ベンチャーズヴェルヴェット・アンダーグラウンドを足して2で割ったようだ」と評していたそうですが、言いえて妙だと思います。


このバンドのスタートは78年。アダム&ジ・アンツで後に有名になるアダムが結成した前身バンドB-Sideにいたビド、ギターのレスター・スクエア、ベースのアンディ・ウォーレンが中心となって始まります。その後ドラムスのJ.D.ヘイニー、映像担当のトニー・ポッツが加わり全盛期のラインナップが揃いました。
彼らは商業的には必ずしも成功したとは言えず、ラフ・トレード、ディンディスク、プレ、チェリー・レッド、ブランコ・イ・ネグロ、エルと小レーベルを転々としましたが、その間精力的にシングルやアルバムをリリースしています。


The Monochrome Set - He's Frank


79年にリリースされた彼らの1stシングルのB面の曲。
ライブでの定番曲であり、何度か再録音されているほか、ノーマン・クックファットボーイ・スリムと言えば誰でも分かりますね)が仕掛け人となったユニットBPAであのイギー・ポップがカバーするなど、何気に彼らの中では知名度の高い曲です。
ちょっと投げやりな感じのヴォーカルと、なんとも言えない浮遊感がいいですね。


The Monochrome Set - Eine Symphonie Des Grauens


2ndシングル。邦題は『夜明けのシンフォニー』。タイトルはドイツ語ですが、実は映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1924年)からとったものらしいですね。
ねじくれた音階でありながら妙にとっつきやすいメロディラインと、中近東を思わせるようなギターが印象的な、初期の名曲です。
映像は初期のライブです。演奏は荒くリズムは走りヴォーカルは不安定と、正直かなり下手くそなんですが、センスの良さは感じさせてくれてなかなか捨てがたい味があります。


The Monochrome Set - Mr. Bizarro


3rdシングルのB面の曲。
エキゾティックなパーカッションとギターによる無国籍感覚が漂う、隠れた名曲の1つだと思っています。
当時コンピレーション・アルバム『Check Out』でこの曲を知り、一時期病み付きになってレコードが擦り切れそうになるくらい聴いていたんですよね。懐かしい。


The Monochrome Set - Silicon Carne


4thシングルのB面の曲。
彼らにしては荒々しい感じの曲ですが、そのいびつなパンクっぽさとネオアコな部分の混交ぶりが、いかにも一筋縄ではいかない感じにひねくれていて好きでした。
実はこの曲は発売後だいぶ経ってから、コンピレーション・アルバム『Volume, Contrast, Brilliance... Sessions & Singles, Vol. 1』でようやく聴くことができたんですよね。彼らのようなインディーから出たバンドって、アルバム未収のシングル収録曲とかが多いんで真面目に聴こうとするとちょっと大変です。


The Monochrome Set - Strange Boutique


80年にリリースされた待望の1stアルバム『Strange Boutique』のタイトル曲。
彼らには珍しくベースがドライブしていて、疾走感のある高速ナンバーですね。オルガンの使い方なんかは洗練された印象ですが、最後サイケデリックに崩れていくところは、彼ららしいかなと。


The Monochrome Set - B.I.D. Spells Bid


80年にリリースされた2ndアルバム『Love Zombies』に収録されていた曲。
これも音自体はギターポップの範疇と言えなくもないんですが、高揚感のない歌とヘロヘロなギター、奇妙なリズムが不思議につかみどころのない雰囲気を生み出していて、単なるネオアコに留まることを拒否しています。
映像はテレビ番組のスタジオライブですが、『Eine Symphonie Des Grauens』の映像と比べると、だいぶ演奏はこなれている印象を受けますね。それでも決して上手くはないんですが。


その後彼らはモンド感を薄める方向に進むことになりますが、それについては次回のお楽しみということで。