スピッツエナジー

ここのところマイナーなバンドのことばかり書いていた記憶があるんですが、今日はさらにマイナーなスピッツエナジーです。
このバンドはヴォーカルのスピッツを中心に英国バーミンガムで結成された、典型的な泡沫ニューウェーブバンドです。特にヒットとかは出していませんが、当時マニアたちには人気があったように記憶しています。
特徴は音よりも何よりも「毎年バンド名を変える」という意味不明なコンセプトです。とりあえず77年にスピッツという名前でデビューしてから、スピッツオイル→スピッツエナジー→アスレティコ・スピッツ80→スピッツレスといった感じで名前が出世魚のように変わっていきました。どういう順番だったかちゃんと把握はしていませんが、他にもスピッツセクシャル、スピッツヴィジョン、スピッツマス、スピッツエナジー2000などの名前も名乗っていたようです。そういうバカバカしいこだわりのおかげで、キワモノ的な知名度はありました。
音のほうは今世紀になってから発売されたベスト盤を聴いた限りでは、パンク、テクノポップ、ギター弾き語り、ミニマル風実験音楽などと年代によって分裂症的に変化していますが、いかにも英国っぽくひねくれているところは一貫していると感じました。頑ななまでに安っぽい音しか出さないというのは、おそらく性分なんでしょうw


Athletico Spizz 80 - Where's Captain Kirk?


79年にシングルとしてリリースされた彼らの代表曲です。邦題は『カーク船長はどこに?』。ちなみにこのライブの時は、アスレティコ・スピッツ80名義だったみたいですね。
変則的なギターとちょっと古臭いシンセなど、いかにも当時のニューウェーブっぽいチープでガチャガチャしたサウンドと、ポップなメロディーが印象的な曲です。
歌詞はあのスタートレックがモチーフとなっていて、「ミスター・スポックに助けられて、カーク船長を探して宇宙を旅したが、やっと気づいた。僕こそがカーク船長だったんだ」というわかったようなわからないような変てこなものですが、そのへんもニューウェーブっぽいっちゃぽいですね。



こちらは当時の記録映像集『Urgh! Music War』に収録されたライブです。
昔懐かしいクレイジーフォームを噴出しまくりながらのステージングは、やんちゃな感じが溢れていて微笑ましいです。


この曲はモノクローム・セットとのコンピレーション・アルバム『Check Out』として、邦盤も発売されました。つーか僕もモノクローム・セット目当てでそのコンピを買って、そこで初めてこのバンドの音を聴いたんでした。
たいしてヒットもしなかったマイナーな曲ではありますが、欧米では知る人ぞ知るカルトな曲らしく、あのR.E.M.もカバーしています。


R.E.M. - Where's Captain Kirk?


これは92年にリリースされたファンクラブ用のシングルに収録されていたものだそうです。
原曲のガチャガチャした味を残しつつも、ちょっとスピードを増してハードに味付けされていて、かなりカッコよくなっています。


Spizzenergi - The Model


これはクラフトワークの名曲のカバーです。
ふざけているのかと思えるところもありますが、そこが彼ららしいと言えばらしいでしょうか。


このバンドは商業的な成功を収めたわけでもなく、評価が高かったわけでもないのに現在も生き残っています。つべに今年のライブ映像もあるくらいですから。
名前はスピッツに定着させたらしく、スピッツも「お前誰やねん」とツッコミたくなるくらい膨張してただのオヤジと化してますが、元気は元気みたいです。
こういう感じでマイペースに活動していけるというのも、それはそれで悪くないのではないでしょうか。