XTC

僕は今までいろいろな音楽を聴いていますが、その中でも最も好みなのは70年代末から80年代前半くらいの、英国のニューウェーブと呼ばれた音楽です。
中でも特によく聴いていたのがXTCです。自分がコピーバンドをやっていたこともあって、ストラングラーズ(これも古い)とともに非常に愛着のあるバンドなのですが、現在の日本での知名度はどうなんでしょう。
たまに話題に上っていることがあっても、それはほとんど後期のビートルズビーチ・ボーイズを思わせる甘美なポップスに対する評価であり、初期の独特の和声を使ったソングライティングに乗って、バリー・アンドリュースのキーボードが縦横無尽かつ変態的に跳ね回る音や、中期のダブに意欲的に接近しつつ、ひねりの効いたポップセンスや遊び心、実験性をふんだんに盛り込んで作りこまれた音は、一部の好事家にしか評価されていない気がして、そこがオールドファンの僕にとっては不満だったりします。


XTCは77年、パンク・ムーブメントが吹き荒れる英国でデビューし、ポップでありながら実験的で、早くもポスト・パンクを具現化したような音で高い評価を得ました。
いかにも英国っぽいひねくれていて凝ったメロディーと、ソリッドなリズム、荒々しい攻撃性と内に秘めた知性が共存する音は、当時の僕にとっては大変新鮮かつ衝撃的で、FMで聴いた次の日にはアルバムを買ってました。当時は月のお小遣いが1500円でアルバムは2500円とかそういう時代ですから、我ながらずいぶん思い切ったことをしたものだと思いますが、それくらいインパクトがあったということでしょう。
それから彼らのアルバムは全部買って聴いてますね。広く浅く音楽を聴く僕としては、こういう形でのミュージシャンとの付き合いは非常に珍しいことです。


とりあえず今回は挨拶代わりとして、バリーが在籍していた初期の頃の音を載せます。


XTC - Radios In Motion


78年にリリースされたデビュー・アルバム『White Music』のオープニングを飾った曲。
シングルカットされてはいないので、PVはないのですが、このスタジオライブだけでも十分魅力は伝わるのではないでしょうか。
XTCはパンクではないですし、本人たちもその流れで語られることを嫌っているんですが、やはり時代の影響からは免れ得なかったみたいで、いかにもパンクっぽいストレートで躍動感溢れる演奏になっています。
それでいてなんとなく変態的というか、一筋縄ではいかない感じがするのはさすがですけど。


XTC - Statue Of Liberty


これも『White Music』収録曲。当時日本でもシングルカットされましたが、『自由への叫び』とかいう恥ずかしい邦題がつけられてましたっけ。
この曲は当時の彼らにしてはそれほどひねりがなく、ビートルズなどのオールディーズの影響を強く受けている印象を持ちました。
当時僕はパンクにかぶれていたんで、ジョニー・ロットンジョー・ストラマーの言うことを真に受けて、「ビートルズローリング・ストーンズは過去の遺物」だと本気で思っていたんですが、そのへんの呪縛から割とあっさり脱出できたのは、このあたりの曲の影響もあるのかもしれません。


XTCはその後メンバーチェンジなどを経るうちに、音楽性もどんどん変わっていったんですが、根底にあるポップさと諧謔やユーモアのセンスが変わらなかったせいでしょうか、ずっと僕のフェイバリット・バンドのままでいます。
日本でXTCを知ってる人は、たいてい『Oranges & Lemons』あたりが好き(実際オリコンのアルバムチャートで上位に入った)だったりするんですが、初期の音もいい、と声を大にして言いたいです。
ポップ・パンクやパワー・ポップが好きな人には、訴えるものがあるんじゃないかと思うのですが。
80年代前半にリーダーのアンディ・パートリッジがストレス性疾患(舞台恐怖症らしい)にかかり、ライブができなくなってしまったため、生の彼らを日本で見ることができないのが残念です。
まあ今現在メンバーはアンディ一人しかいないので、たとえ病気が治ってもライブはなかなか難しいでしょうけど。