エクストリーム

昨日ちょっと名前を出したんで、今回はエクストリームです。
一応はLAメタルのムーブメントの中から出てきたバンドではあるのですが、他のバンドとは違った特徴があって印象に残っているんですよね。
それが何かというと、リズムの特異性です。黒人音楽に強い影響を受けたと思しき、ファンキーで躍動感溢れるノリは、彼らの最大の個性でした。
ハードロックやヘヴィメタルの持つ構築美と、グルーヴィーで奔放なファンクの要素は相性が悪いようで、これらの融合を試みたミュージシャンは他にも数多くいますが、大抵失敗に終わっています。
それをファンクの方面からアプローチしたのが、レッチリに代表されるミクスチャーですが、逆にメタルの方面からアプローチしたのがエクストリームだったと言えるかもしれません。


Extreme - Get The Funk Out


90年にリリースされた2ndアルバム『Pornograffitti』に収録された、彼らの代表曲。
イントロのクールなベースや、ファンキーで華やかなホーンの音に象徴される、ファンクとメタルの絶妙な融合具合が面白いですね。
それとヌーノ・ベッテンコートの素晴らしいギタープレイは圧巻です。
印象に残るのは間奏でのストリング・スキッピング*1しながらのタッピング*2ですが、むしろ肝なのはバッキングですね。
そして軽快で強靭なリフが素晴らしいです。メタルのギタリストで、ここまで上手に裏打ちのリズムを刻める人はいないかもしれません。そう言えばうちの会社に本職はギタリストで、たまにアルバイトで来る人がいるんですが、その人もヌーノのバッキングをベタ褒めしてましたっけ。


Extreme - More Than Words


これも『Pornograffitti』収録曲で、ビルボードで1位を獲得したため、彼らの中では最も知名度の高い曲。
美しいメロディを持ったアコースティックなバラードで、ゲイリー・シェローンの切ない歌声と暖かいハーモニー、そしてヌーノのパーカッシブなアコギが良いですね。
この曲と、先に挙げた『Get The Funk Out』が、同じアルバムで並んで収録されていたというのも、彼らの音楽性の幅広さを物語っていると思います。
ただこれが売れたことで、ファンクメタルのオーソリティに徹しきれなくなり、結局はバンドの寿命を縮めてしまったという側面もある気もするので、ちょっといろいろ複雑な気持ちにもなるのですが。


Extreme - Hip Today


95年の4thアルバム『Waiting For The Punchline』に収録されている曲。
このアルバムはグランジオルタナに接近しているように思われたため、ファンからの評価は低いのですが、この曲は個人的に好きです。
地味ですけどヘヴィなリフもいいですし、妙にうねうねした感じの、変だけどテクニカルなギターソロもカッコいいですし。


エクストリームは96年にヌーノが脱退したあと、ゲイリーがヴァン・へイレンの三代目ヴォーカリストとして迎えられることが決まった(99年まで在籍)ため、自然消滅してしまいました。
しかしゲイリーがフリーになるとメンバーが一緒にプレイする機会も多くなり、エクストリームも04年、06年、07年の3度にわたって再結成、08年にはアルバムも発表しています。
ちなみにヌーノはJAM Projectや嵐のアルバムに参加したり、出身地ボストンのチームに所属する松坂大輔のテーマ曲の制作に参加したりするなど、日本との関わりも深いミュージシャンです。

*1:間の弦を飛ばして弦移動ピッキングする奏法。弦を飛ばすのは一般的に難しい奏法で、これを高速アルペジオに用いるのは、高度なテクニックが必要となる。

*2:右手の人差し指や中指などを使って、左手の延長のような感覚で指板上で弦を叩き付けたりそのまま横に弾いたりして音を鳴らす奏法。日本ではライトハンド奏法とほぼ同意語となっている。