ニール・ヤング

なんか疲れててハードな曲とか聴く気がしないですし、かといってポップスみたいなのも聴く気にならないわけで。
こういうときは淡々とした、アコースティックなものに限ります。


Neil Young - Heart Of Gold


カナダのシンガーソングライター、ニール・ヤングの名曲『孤独の旅路』です。
72年にアルバム『Harvest』に収録された曲で、全米1位を獲得するなど多くの人に親しまれています。僕は後追いで聴いたのですが、彼の昔の曲の中ではこれが一番気に入りましたね。
ボブ・ディランを髣髴とさせるようなハーモニカとアコギ、そしてちょっと震えるような鼻にかかった声が、得も言われぬ渋味を醸し出していて、静かで切なく郷愁を誘ってきます。
非常にシンプルだけどダイレクトに人生を語る歌詞も、年齢を重ねてから聴くとまた味わい深いものがあるのですが。


ニール・ヤングは非常に熱い音楽的情熱を持っている人で、本来のルーツであるフォーク以外にも、ハードロック、カントリー、ロカビリー、テクノ、グランジなどいろいろな音楽に興味を示し、その影響を受けて発表作品ごとに作風を変化させています。
そのため節操がないと揶揄されることも多く、またテクノへの接近のようにぶっちゃけ明らかな失敗もあるのですが、大ベテランでありながら決して今いる位置に安住することなく、また周囲の評価に拘泥することもなく、絶えず新しいものに挑戦し続ける姿勢と、常に時代の空気を呼吸する自由な精神を持ち続けていることこそ彼の真骨頂であると思っています。年を取ってもそれを続けるということがいかに難しいかは、自分自身で十分感じていますから。
また彼は、9月11日事件直後には、放送が自粛されていたジョン・レノンの『Imagine』を敢えて歌うなど、政治的な圧力を恐れない硬骨漢でもあります。
その硬骨ぶりが現れているのがこの曲。


Neil Young - Rockin' In The Free World


89年のアルバム『Freedom』に収録された曲。
この曲では新自由主義政策による貧富の差の拡大などの病んだ米国社会を、メタファーを散りばめた歌詞で徹底的に皮肉り、現代のすべての矛盾に疑問を投げかけつつも、「それでもロックし続けるんだ」と訴えています。またPVで事件のフィルムを挿入していることで明らかなように、この年に起きた六四天安門事件に代表される中国の抑圧体制への批判と、民主化を訴える若者たちへの支持の意志も込められています。
ウッドストック組の彼が、政治的にはリベラルであるのは当然といえば当然のことですけど、さすがにここまで徹底的に言い放つのは凄いと当時思いました。
後にマイケル・ムーアの映画『華氏911』でのエンディングテーマに使われたのも頷けます。