ポリス

僕が中学生くらいの頃には、ロッカーというのは不健康であるのが当たり前でした。
酒を飲み女を抱きドラッグに耽り、昼夜逆転したような生活を送る。それがロックンロール・ライフでしたから。
その固定観念を思いっきりひっくり返してくれたのが、当時ポリスにいたスティングでした。
ポリスが来日したとき、スティングが早朝皇居の周りをジョギングしている写真が音楽雑誌を飾り、それを見た僕は衝撃を受けました。体に良いことをしているロック・ミュージシャンって、そのとき初めて見ましたからね。
その後あの悪徳と退廃の巣窟のようだったローリング・ストーンズまで、命が惜しくなったのかあっさりクリーンになってしまったのですが、その先鞭をつけたのはスティングだと勝手に思っています。
まあそれはそれとして、今のスティングには別に興味はありませんけど、ポリスは大好きでした。特に初期。


The Police - Driven To Tears


80年にリリースされた3rdアルバム『Zenyatta Mondatta』に収められている曲で、邦題は『世界は悲しすぎる』。
貧困問題をテーマにして書かれた曲で、解散後もスティングがソロ活動において頻繁に取り上げています。
演奏は非常に力強く、トリオ演奏の限界を感じさせません。地味に聴こえますが実はテクニック抜群のギターソロが、個人的には好きです。
あとスティングがザ・ビートのタンクトップを着ているのも、わかってるなあって感じでいいですね。


今は中心人物だったスティングのみが有名になってしまいましたが、70年代末から80年代初めくらいにかけてのポリスのカッコよさは、尋常じゃなかったという記憶があります。
とにかくニューウェーブのムーブメントに乗って現れたバンドにしては、異常なくらい演奏が上手くて、ライブもすごく聴き応えがありましたから(生で聴いたことはないけど)。
まあベースのスティングがジャズ出身で、ドラムのスチュワート・コープランドが元カーヴド・エア、ギターのアンディ・サマーズがアニマルズやソフト・マシーンで弾いていたという経歴を見れば、その腕前も納得ですが。
個人的にはコープランドの、二拍目と四拍目のアクセントの部分をスネアじゃなくてバスドラで打つというところが、すごく斬新な感じがして好きだったのを覚えています。
そういう叩き方をするのは、当時はレゲエのドラマーくらいでしたからね。初期ポリスはレゲエの影響が強くて「ホワイト・レゲエ」とも呼ばれてましたが、表面的なスタイルだけでなくこういうところも、すごく研究されているなと感じました。


ポリスは84年に一度解散しますが、07年にデビュー30周年を記念して再結成し、そのまま活動を続けています。
ワールドツアーも敢行し、80以上のステージを完全3ピースでやってのけたということですから、まだまだ演奏力の高さは健在のようです。