フランキー・ゴース・トゥ・ハリウッド

ちょっとトレヴァー・ホーンに戻ります。
トレヴァー・ホーンは多くのミュージシャンをプロデュースしましたが、その中でも最もセンセーショナルだったのはフランキー・ゴース・トゥ・ハリウッドだったでしょう。
彼らは1980年代半ばに活躍し、ホーンが作り出す時代の先端を行くなサウンド、ラジカルなダンス・ビート、社会と文化を皮肉ったような話題性の高い歌詞、ゲイであることをアピールしたセンセーショナルなイメージ戦略によって一躍時の人となり、大ヒットを多数放ちました。
また早くからリミックスに注目し、レパートリーの別バージョンを次々と作っていたのも特徴で、1つの曲を特定の形だけで終わらせないという姿勢が、管理システムへのアンチ意識を思わせるとして共感を呼んだほか、12インチシングルの隆盛の先駆けともなりました。


Frankie Goes To Hollywood - Relax


彼らのデビューシングル。
この曲はSM行為を描写した歌詞や、SEとして入れられている排尿音などが問題となり、BBCのほか多くの国の放送局(NHKも含む)で放送禁止となるなどスキャンダラスな話題を振りまきましたが、結果英国でナンバーワンを記録するなど大ヒットとなりました。今回紹介しているPVも、放送禁止バージョンです。
日本ではヤクルトのCMや、『ココリコミラクルタイプ』のオープニング曲にも使われていましたっけ。
ちなみにバックに使われる強い音は、ホーンが最も強い音と思ったというレッド・ツェッペリンジョン・ボーナムのドラム音をサンプリングしたものだそうです。


Frankie Goes To Hollywood - Two Tribes


彼らの2ndシングル。
この曲は当時の米ソ冷戦と核戦争の危機を歌った曲で、またレーガン大統領とチェルネンコ書記長のそっくりさんが取っ組み合いをするというPVが話題を呼び、結果全英で9週連続1位を獲得するという大ヒットになりました。


こうして一世を風靡した彼らですが、仕掛けのあざとさから「トレヴァー・ホーンの操り人形」と皮肉られ、ミック・ジャガーからは「イギリスのヴィレッジ・ピープルだ」と評されるなど、毀誉褒貶の多いバンドでした。実際モンキーズと同じで、生演奏はできずテープを流していたようですし。
結局人気は長続きせず、またバンド内での人間関係の軋轢も大きかったため、87年にはヴォーカルのホリー・ジョンソンが脱退して、バンドは活動を停止します。
04年にはホーンの25周年記念コンサートにてホリーとギターのブライアン・ナッシュ抜きで再結成。その後各地でライブを披露しレコーディングも計画されますが、新ヴォーカリストが脱退したためプロジェクトは頓挫しました。
ちなみにホリーはバンド脱退後、エイズに感染したことをカミングアウトしましたが、今のところまだ存命のようです。