バグルス

おかげさまで熱は下がりました。医師の処方する薬は、売薬とは効き目が違いますね。
では早速今日も行きましょう。


70年代後半から80年代前半にかけて、電子音やシンセサイザーを多用したテクノポップ(欧米ではエレポップ、シンセポップ)がチャートを席巻したんですが、その先鞭をつけた形になったのがバグルスです。
バグルストレヴァー・ホーンジェフ・ダウンズの2人で結成されたエレクトリック・ユニットです。活動期間は2年弱と短かったのですが、『Video Killed The Radio Star』という曲が大ヒットし、何度もカバーされているので、知っている方も多いのではないでしょうか。


The Buggles - Video Killed The Radio Star


これがその曲。『ラジオ・スターの悲劇』の邦題で有名です。
この曲が79年に突如として全英ナンバーワンヒットとなったことにより、テクノポップの時代の幕が開いたと言っても過言ではありません。それほどこのヒットは衝撃的でした。
テレビの出現により仕事を奪われて没落した、かつてのラジオ時代のスターを描いたこの曲は、過去を忘れたくないという願望と、現代の子供達に過去の良さがわからないことへの落胆に触れるという歌詞をノスタルジックなメロディーに乗せて、最新のテクノロジー満載の音を使って歌うという逆説的な構造になっており、そこに英国人らしいアイロニーを感じます。
またテクノロジー優先だった当時の社会に横たわる、目に見えぬ不安をリアルに描出している点でも、単なるポップソングではない鋭さを感じます。
この曲は1981年8月1日0時01分に開局したMTVのミュージック・チャンネルで、最初に流されたPV(監督はラッセル・マルケイ*1)であり、2000年2月27日にはMTVでの放映回数が100万回を超えています。
カバーされる機会も多く、意外なところではベン・フォールズ・ファイブなどもやっていたりします。


バグルスはすぐに活動を休止し、ホーンとダウンズはなぜかプログレッシブ・ロックの大御所イエスに加入するのですが、イエスは畑違いの二人を入れたことで従来からのファンから不興を買い、結果一時的に解散に追い込まれてしまいます。
二人は再びバグルスとして1981年にセカンドアルバムを発表しますが、まもなく袂を分かって活動を停止しました。
その後ホーンはZTTレーベルを設立し、プロデューサーとして大活躍します。またダウンズはエイジアを結成し、これも大成功を収めました。
ホーンとダウンズは04年にはバグルスを一時的に再結成し、チャールズ皇太子信託基金のチャリティーコンサートに参加しています。
また昨年にはホーンが単独でバグルスの再結成を宣言していますが、ダウンズはイエスに加入したためこれには不参加のようです。

*1:映画監督。クイーン、デュラン・デュランビリー・ジョエルエルトン・ジョンビリー・アイドル、ロッド・スチュアートやカルチャー・クラブといった一流どころのミュージックビデオを手がけて、MTVアワードなどを受賞し成功を収めた。その余勢を駆って映画にも進出したが、最初に撮った映画が巨大なイノシシが人を襲うという凡作『レイザーバック』だったため評価を落とす。その後は『ハイランダー』シリーズや『バイオハザードIII』などを手がけたが、少なくとも『ハイランダー2』は超絶バカ映画だった。