シャッグス

タモリ倶楽部』の録画をまとめて観ていたら、このバンドがかかったので思い出しました。「世界最悪のロックンロールバンド」シャッグスです。
僕は昔このバンドの編集盤を、フランク・ザッパの推薦文に惹かれて買っちゃったんですよね。帰って聴いてみて呆然としましたっけ。


シャッグスは60年代の後半にドロシー、ベッティ、ヘレンのウィッギン三姉妹により、アメリカのニューハンプシャー州で結成されたバンドです。
彼女たちの父親(このバンドのプロデューサーにもなっている)が、何を思ってか彼女たちにレッスンを受けさせてバンドを組ませたということらしいのですが、そんないきさつはどうでもいいわけでして。


彼女たちの特徴は簡単に言うと「デブ」「ブス」「ヘタ」。
この3つだけでバンドのほとんどを説明できるのですから、すごいっちゃすごい話ですが。
まあ最初の2つは自分ではどうにもならないことですから置いておくとして、その演奏のヘタさ加減は常軌を逸しています。
だってそもそもリズムキープすらもろくにできないようなドラムに、全くそれと違うリズムでギターが絡んできて、そこにまたとんでもなく音痴な歌が乗っかってくるんですから。
正直な話アウトサイダー・アートの一種か何かかと思っちゃいましたよ。そのくらいすごい。


The Shaggs - My Pal Foot Foot


The Shaggs - Philosophy Of The World


どっちを聴いても大差ないような、脱力した世界が展開されています。
2本のギターとドラムスとヴォーカルの奇跡的なゆるさとズレの妙味は、よく言えば早すぎた少年ナイフ、悪く言えばキ×ガイ沙汰。
だけどテクニックなんて音楽をするうえでは無意味だ、というある種のパンク・スピリットに通じるものも感じられて、微笑ましい気分になるのも事実ではあります。
世の中には音楽をやりたくても、ヘタだし音痴だしと躊躇っている人が多いと思いますが、そういう人たちに勇気を与える音でもありますね。


ちなみにシャッグスは、フランク・ザッパの他にあのカート・コバーンもお気に入りだったとか。
あと僕の買ったCDには、ザッパ以外にもボニー・レイットジョナサン・リッチマンという、つながりがあるんだかないんだかよくわからないメンツの推薦文も載ってましたっけ。
きっとみんなシャッグスの音に、まだ楽器を持ち始めたばっかりの頃の自分を見たんだろうなあ、と思っているのですが。


その後シャッグスは75年に2ndアルバムを発表、その後もプロデューサーである父親が亡くなるまでは定期的にプレイをしていたそうです。