ヒューマン・リーグ

80年代のポップスを聴いていた人にとって、ヒューマン・リーグという名前は懐かしいかもしれません。
80年代初頭から中頃にかけて、派手な女性コーラスを擁した都会的でお洒落なエレ・ポップ・ユニットとして、たくさんのヒット曲をチャートに送り込んでいましたから。
しかし本来の彼らは、今で言うインダストリアル系に近いような音を出していた、きわめて実験色の強いシンセ・ユニットだったのですから驚きです。
ヴォーカルとシンセ奏者、そしてビジュアル・エフェクトを担当する映像技師という編成も、それ以前のロックではありえない発想で面白いと当時感じたものです。


The Human League - Empire State Human


聴いてみて感じるのは、前衛的、実験的なことをやっていても、それに使用している音自体はあくまでポップというこのギャップが面白いなということ。
その結果音楽が特殊な異化作用をもたらすのではなく、普通のポップ、ダンス・ミュージックとしての説得力を持っていて、そこが当時多く存在した実験的なシンセ・ユニットとは趣を異にするところだと思います。
そう言えば彼らは、当時フィル・スペクターの曲なんかもカバーしていて、そっち方面への目配せも忘れてなかったですね。


その後彼らはヴォーカルのフィル・オーキーと、シンセ奏者のマーティン・ウェアとイアン・クレイグ・マーシュの間で分裂してしまいます。
フィルはそのままヒューマン・リーグを名乗り、女性コーラス2人を加入させてポップでダンサブルな音に転換しますが、実験的でありつつ音がポップだったのが面白かったのに、音楽性までポップになっちゃってなんだかわけがわからなくなっちゃいました(売れましたけど)。
マーティンとイアンはヘヴン17を結成し、エレクトリック・テクノ・ファンクといういかにも珍味な感じの音を出して、新し物好きの僕を喜ばせてくれたんですが、そのうち普通のポップスになっちゃってヒューマン・リーグとたいして変わらなくなっちゃいました(あっちほど王道ポップスじゃなかったけど)。
まあ人にはいろいろと事情があるんでしょうからしょうがないですけど、個人的にはちょっと残念でした。