カンサス

皆さんはアメリカン・ハード・プログレというジャンルをご存知でしょうか。
後に「産業ロック」と呼ばれることになったバンドが多いせいか、あまり音楽的に評価されていない面もあるのですが、プログレッシブ・ロックのテクニックと構築性に、アメリカのカラッとした感覚を足したようなサウンドは、当時なかなか面白かったように思います。
このジャンルにはジャーニー、スティクス、ボストンなど、後に大ヒットを飛ばしたバンドが多いのですけど、個人的に好きだったのはカンサスです。
何故かというと、バイオリン担当のメンバーがいるってのが気に入ってたんですよね。僕はバイオリンの音って大好きなんで。


Kansas - Carry On Wayward Son

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76年にリリースされたアルバム『Leftoverture』からのシングルです。邦題は『伝承』。
この曲は映画『幸せの旅路』の主題歌に起用され、ビルボードで11位まで上がり、バンドにとって初のヒット曲となりました。またシングル・ヒットに引っ張られる形で、アルバムもチャートで最高5位まで上昇し、最終的に400万枚を売り上げる大ヒットとなりました。
しかし今聴くと、もろにハードロック+プログレッシブ・ロックですね。ドラマティックかつ複雑な展開と高い演奏力、わかりやすいメロディがバンドの底力を感じさせてくれます。
ちなみにバイオリンのパートはありません。バイオリニストのロビー・スタインハートは、終始タンバリンを手にし、時々コーラスしてますw


Kansas - Dust In The Wind


77年にリリースされたアルバム『Point Of Know Return』からのシングルです。邦題は『すべては風の中に』。
バンドを代表するヒット曲で、ビルボードでは6位まで上がっていますが、それくらい売れても当然と言いたくなる名バラードです。ロック史に残る素晴らしい曲ですね。
アコースティック・ギターのイントロから、中盤のバイオリンソロへの美しい流れが抜群です。繊細な感じもアメリカらしくなくて非常に良いですね。
この曲はスコーピオンズサラ・ブライトマンなどもカバーしていますが、やはり本家の持つ哀愁には勝てないかな、と思います。


Kansas - On The Other Side

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80年にリリースされたアルバム『Monolith』のオープニングを飾った曲。
この時期のカンサスの楽曲は、すでに徐々にではあるがポップ化が進行しつつあったわけですが、この曲が発散する哀愁や、ギターの泣きっぷりは初期を彷彿とさせます。それでいてベタついた印象がないのはさすがカンサス、といったところでしょうか。
ただヴォーカルのスティーブ・ウォルシュの、ジョギングの帰りかと言いたくなるほどのラフなスタイルには眩暈がしますけど。もう少し何とかならなかったのかな。


カンサスは80年代になってウォルシュらが抜けると、プログレ的な要素も捨て、よりわかりやすい曲に変化してヒットを出していったのですが、個人的にはつまらなくなって聴くのをやめてしまいました。
その後産業ロックの波が一段落すると、ちゃっかりまた元のような音楽性に戻り、現在も活動を続けているようです。