セックス・ピストルズから派生したバンドもいくつかありますが、その中で一番パーマメントな活動をしたのはパブリック・イメージ・リミテッド(略称PIL)でしょうか。
ピストルズを脱退したジョニー・ロットンは、本名のジョン・ライドンに戻し、
「ロックは死んだ。ポップミュージックは生きている」
という名言を放ちつつ、旧友のジャー・ウォブル(ベース)、元ザ・クラッシュのキース・レヴィン(ギター)らとともにPILを結成します。
PILはアルバム毎に音の代わるバンドで、1stアルバムでは
Public Image Limited - Public Image
のような普通のパンクに近い音(全英9位)だったんですが、2ndアルバム『Metal Box』(初回盤は45回転LP3枚組が、円盤型の金属製ボックスに入った形で発売された)では、
Public Image Limited - Poptones
Public Image Limited - Death Disco
のような、アヴァンギャルドな音へと変化していきます。『Death Disco』は全英20位となっています。
呪文のようなジョンのヴォーカル、神経質で繊細なキースのギター、地響きのようなジャーのベースは当時聴き通すのが苦痛ですらありましたが、インパクトは特大でした。
その後ジャーが脱退すると、PILは代わりのベーシストを入れることなく活動を継続し、3rdアルバム『Flowers Of Romance』では
Public Image Limited - Flowers Of Romance
のような、ベースとの絡みから開放されたことによる独特のリズムと、本人曰く13世紀の教会音楽から影響されたという奇怪な音世界に変貌していきます。
個人的にはこのアルバムが一番好きですね。中東っぽくて(ジョンは中東とは関係ないと言ってましたが)エキゾティズムを感じます。
なおこの曲は、全英24位を記録しています。
Public Image Limited - This Is Not A Love Song
キース・レヴィン脱退後に発表された4thアルバム、『This Is What You Want... This Is What You Get』からのシングル。全英5位と、彼らの最大のヒットとなりました。
ディスコ・サウンドを意識したような、ポップでクリアーな音が特徴です。
Public Image Limited - Rise
ビル・ラズウェルやスティーブ・ヴァイ、坂本龍一、ジンジャー・ベイカーといった、パンクの枠を飛び越えたメンバーが参加しての5thアルバム、『Compact Disc』からのシングル。全英11位。
ロックを否定し続けたPILが、完全にハードロックに回帰した、PILの問題作にして最高傑作です。
その後PILは92年を最後に活動を停止しますが、ライドンはピストルズを再結成した他、落ちぶれた芸能人がジャングルでサバイバルを行う番組に出演したり、英国のディスカバリー・チャンネルにて、昆虫をテーマにしたシリーズ物にメインパーソナリティーとして出演したりと、個性的なテレビタレントとしても活動しています。
また09年にはPILも再結成し、本国でミニ・ツアーも行ったということです。